人を褒めるときに押さえておきたいポイントは3つあります。
相手の成長に結びつくよう褒めるには、具体性が不可欠です。「よくやった」だけではなく、「よくこれだけ詳しく調査できたね」「売上げ○%増とはすごい!」などと、良い点を具体的に示すと、相手は自分の伸ばすべきポイントを把握しやすくなります。
褒めたり叱ったりするには、周囲を巻き込むことも有効です。人前で褒めることは、相手が嬉しいだけでなく、周囲に褒める習慣を浸透させる効果もあります。叱るときも、自分が言ってもダメなら他の人に叱ってもらうように頼むなど、協力態勢を作りながら行なうと職場の関係性が緊密になります。
褒めるなら「も」を使い、叱るなら「もったいない」を使うというテクニックです。「も」は、ある意味、最強の助詞。「説明『も』上手だね」「声『も』良いね」と言うと、他にも多くの良い点があるような印象になり、褒める効果が倍増します。対して、「もったいない」は、叱りつつも可能性を認める言葉です。「(本当はできるのに)ここでミスをするなんてもったいない!」と言えば、高い評価に基づく親心を感じてもらえるでしょう。
叱ると同時にミスの原因を探るのも良い方法です。「納期に間に合わなかったのはなぜ?」と問い、原因がわかれば、「次からそこに気をつけて」と指導する。原因を取り除くことで、相手の成長を促せます。
叱るときは人前ではなく一対一で叱ること。そして、褒め言葉とセットにするのがコツです。たとえば、商談で失敗した部下には、「そのタイミングでお金の話を出しちゃダメだ」と叱りつつ、「でも事前準備は完璧だったね」と褒め言葉を添えるのです。
「褒める・叱る」は、相手が将来有用な人材となるための事前準備だ、という視点がすべての基本です。まずは後輩や部下の一人一人に対して、「10年後、こうあってほしい」という姿をイメージしてみてください。そこから逆算して、「今、この場面でどんな言葉が必要か」を考えましょう。
相手の成長ために褒める・叱るというのは、古くから受け継がれてきた日本人の美点だと思います。「昭和の頑固親父」と言えば、相手の将来を思って、ときに熱く、ときに厳しく育てる姿が思い浮かぶでしょう。それは、正社員ばかりで、終身雇用が保証されていた、高度成長期の話だろう。雇用が流動化している今は、そんな接し方は流行らない。そう思われる人もいるかもしれません。しかし、それは違います。数年後には同僚でなくなっているかもしれない。だからこそ、次の職場で立派に仕事ができるように成長してもらいたい。そう思って部下を育てる。自分の損得を越えた、相手への好意が必要なのです。