過去の名言から知り、今の生活に生かす

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山本為三郎(経営者)の名言・格言

渡辺崋山の商人訓のなかで、私の記憶にあるもうひとつの戒めは「近所に同業ができたら、よしみを厚くして相励め」ということである。これは実にいい言葉だと思う。同業は競争者ではないという精神である。この精神があるからこそ、大阪の道修町は町の端から端まで4、5丁の間、全部薬屋でやっているし、また本町といえば、昔から繊維業者ばかりが軒を並べている。ときに消長はあるにしろ、こうしてみんな何代、何十代と続けていくのは結局、よしみを厚くして相励んでいるからではなかろうか。

大阪には渡辺崋山の書いたという商人訓がある。その一番はじめに「召使より先に起きよ」とある。これは主人が使用人の生活を支えてやっているという考え方ではなく、使用人たちに自分の商売をしてもらっているのだ、だから主人は召使より先に起き「おはよう」というあいさつに、心から感謝をこめて、そして使用人を励まして働かせていくという心構えをいったものである。このごろのようにともすると重役は、朝はゆっくり11時ごろ出てくる。反対に従業員は8時からの出勤時間を1分遅れても、遅刻のハンコを押されるような風潮の逆を行くものである。

数十年にわたる事業活動の中には、私も先輩知友に勧められたり頼まれたりして、ビール以外のいろいろな仕事に手を染めてきた。しかしいずれにしても私はそれらのことに、自分なりの信念を持たなければ始めなかっただろうし、またやりかけたことは、それなりの情熱を持って当たったつもりである。

その人になりきってしまって、その人が怒るときには私も怒り、その人が泣くときは私もまた泣いて、ものを考えているのである。

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