劣等感は十全に法則に適合できない生物が、より充実した生を生きたいと思っているのにそれがかなわない痛みであるといえるだろう。とすれば、劣等感とは、積極的に生きたいとする生の願望が何らかの形で否定されることによって顕在化した痛みである。ともいえるということである。
劣等感とは、十全に生きたいと強く願う人ほど味わわねばならぬ可能性が多くなる感覚なのであって、いちがいに委縮した退嬰的なものと思うわけにはいかないのである。我々はほとんど誰も、完璧な形で宇宙の意志を実現しているものではないはずであるから、そのことを強く意識したものほど劣等感を味わうであろう。 【覚書き|退嬰=たいえい=しりごみすること】