経営の方向性をはっきりと示し、明確な説明をしていくことです。知的生産性を向上させるためには、夢と哲学を語り続ける伝道師が求められています。自らビジョンを作り出し、そのビジョンを情熱をもって伝えていくことが大切なのです。経営者の展望、情熱を働く人々が共有した時、そこにはとてつもない知的な力が生まれると思います。
取締役会については、より実質的にすることが大事でしょう。議論を活発にするように議長が誘導することが重要です。少数意見を尊重することです。日本の経営はゲマインシャフト的な立場が強くて、ゲゼルシャフトとしての利益共同体の色彩が薄かった。一方、米国はゲゼルシャフト的色彩が濃厚です。つまり、根本的異なっているわけです。【覚書:ゲゼルシャフト(利害関係に基づいて人為的に作られた社会)、ゲマインシャフト(地縁・血縁・友情などで結びついた共同体)。ドイツの社会学者天ニースが提唱した共同体論】
グローバルスタンダードと言っても、日本の国があって、日本の民族があるというところからスタートしなければならないと思います。日本の文化、風土の上に建てられた経済構造があって、その上に経営制度がある。このことを踏まえて、日本の経営を考えなければいけない。日本人のものの考え方は、欧米のアングロサクソン人とは違います。民族ごとに、体の中に異なった経営の遺伝子のようなものを持っているのです。
日本の経営体制は、いずれも日本の文化、風土を背負った一人一人の人間によって支えられています。日本型経営の特徴ともいうべき、企業内組合、終身雇用制度、年功序列賃金制度などは、集団主義から自然ににじみ出ていた経済体制なのです。
日本企業はこれまで、仲よくやろうとか、和の精神が一番だとか、集団主義の象徴のようなスローガンを出していました。しかし、これからはもっと競争社会であることが意識され、その中で生き残って発展していくという意欲を示した理念でなければいけない。
情熱だけでは説得力は生まれません。様々な尺度や角度で自分を分析しながら、国際的か競争に負けない経営体質をつくり上げていくことも大切です。しかし、単に計算ずくで説明するだけの経営者は経営者ではない。ただの専門家にすぎない。